空間づくりを担うディスプレイ業界

ディスプレイ業界は、私たちの日常生活に密接に関わる「空間づくり」のプロフェッショナル集団です。商業施設、展示会、イベント、文化施設など、人々が集まる様々な場所の企画から設計、施工までを一貫して手がけています。

この業界の特徴は、短期間で魅力的な空間を創出する能力にあります。一般的な建築工事が数年かかるのに対し、ディスプレイ業界では数週間、時には数日で空間を完成させます。これは、急速に変化する消費者ニーズや企業の販促戦略に柔軟に対応するために欠かせない能力です。

ディスプレイ業界が手がける主な空間には以下のようなものがあります:

  1. 商業施設:百貨店、専門店、ショッピングモールなど
  2. 展示会・イベント会場
  3. 文化施設:博物館、美術館、水族館など
  4. オフィス空間
  5. ホテルや結婚式場
  6. テーマパーク

これらの空間づくりを通じて、ディスプレイ業界は社会に”賑わい”と”彩り”の価値を提供しています。人々の記憶に残る空間、感動を与える空間を創出することで、私たちの生活をより豊かなものにしているのです。

次回は、ディスプレイ業界の市場規模と収益性について見ていきましょう。

上昇しているディスプレイ業の利益率

ディスプレイ業界の市場規模と収益性について詳しく見ていきましょう。

矢野経済研究所の調査によると、2021年度の国内ディスプレイ業の市場規模は約1兆2,700億円と推計されています。これは前年度比3.1%減となっていますが、2022年度は回復傾向にあり、前年度比6.3%増の1兆3,500億円になると予測されています。

市場規模の変動には、以下のような要因が影響しています:

  1. 新型コロナウイルスの影響:緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令により、イベントや商業施設の需要が減少
  2. 経済活動の再開:規制緩和に伴う需要回復
  3. デジタル技術の進展:オンラインイベントやバーチャル展示会の増加

一方で、業界の収益性については課題が残っています。ディスプレイ業は構造的に低収益体質であり、資材価格や人件費の上昇、価格競争の激化により、各社の収益性は厳しい状況にあります。

しかし、多くの企業が以下のような取り組みを通じて収益性の向上を目指しています。

  1. 企画、設計、デザイン、制作、施工における差別化
  2. 総合的なプロデュース力の強化
  3. 業務効率化や協力事業者の新規開拓
  4. 発注スキームや仕入れスキームの見直し
  5. グループ会社との連携強化

これらの取り組みにより、徐々にではありますが、業界全体の利益率は上昇傾向にあります。次回は、ディスプレイ業界の市場規模と主要企業について詳しく見ていきましょう。

ディスプレイ業界の市場規模と主要企業

ディスプレイ業界の市場規模と、業界を牽引する主要企業について詳しく見ていきましょう。

2021年度の国内ディスプレイ業の市場規模は約1兆2,700億円です。この市場の中で、上場企業5社が全体の約18%のシェアを占めています。これらの企業は、業界を代表する「総合ディスプレイ会社」と呼ばれ、企画から施工まで一貫して手がける能力を持っています。

主要企業のトップ5を見てみましょう:

  1. 株式会社乃村工藝社
  2. 株式会社丹青社
  3. 株式会社スペース
  4. 株式会社ラックランド
  5. 株式会社博展

ディスプレイ業界のランキング(主業が「ディスプレイ」)より
https://zaimulist.com/rank.php?gyokai=1731

これらの企業の中でも、特に乃村工藝社と丹青社は業界のリーディングカンパニーとして知られています。両社は長い歴史を持ち、大型プロジェクトの実績も豊富です。

例えば、乃村工藝社は近年、Bリーグのスポンサーや北海道のボールパークプロジェクトのプロデュースなど、事業領域を拡大しています。一方、丹青社は「JDN(デザイン情報サイト)」の運営や、SDGsの視点で廃材を取り扱う「4-earth」というECサイトの運営など、独自のポジションを築いています。

また、新興企業として注目されているのが博展です。特にデジタル事業で実績を上げており、若い世代の活躍が目立つ企業として知られています。

これらの企業は、それぞれ異なる強みを持ち、市場の中で独自のポジションを確立しています。競争が激しい中でも、各社が独自の戦略を展開することで、業界全体の発展に貢献しているのです。

次回は、ディスプレイ業界における女性の活躍について見ていきましょう。

女性デザイナーの活躍が期待されるディスプレイ業界

ディスプレイ業界は、近年、女性デザイナーの活躍が特に期待される分野となっています。その理由と現状について見ていきましょう。

  1. 多様な視点の重要性:
    ディスプレイ業界では、様々な顧客層に向けた空間づくりが求められます。女性デザイナーの感性や視点は、特に女性向けの商業施設や展示会などで重要な役割を果たしています。
  2. クリエイティビティの発揮:
    空間デザインは、アートとビジネスの融合が求められる分野です。女性デザイナーの創造性や細やかな感性が、魅力的な空間づくりに大きく貢献しています。
  3. コミュニケーション能力の活用:
    ディスプレイ業界では、クライアントの要望を的確に理解し、それを空間に反映する能力が重要です。女性デザイナーのコミュニケーション能力の高さは、この面で大きな強みとなっています。
  4. ワークライフバランスの改善:
    業界全体で働き方改革が進む中、女性が活躍しやすい環境づくりが進んでいます。フレックスタイム制やリモートワークの導入により、育児や介護と仕事の両立がしやすくなっています。
  5. キャリアパスの拡大:
    かつては男性中心だった管理職ポストにも、徐々に女性が登用されるようになってきています。デザイナーとしてのキャリアだけでなく、マネジメント職としてのキャリアパスも広がっています。
  6. 教育機関との連携:
    多くのデザイン系の教育機関で、ディスプレイデザインのコースが設けられるようになり、若い女性デザイナーの育成が進んでいます。

ただし、課題もあります。業界全体での女性の比率はまだ低く、特に上級職での女性の割合は十分とは言えません。また、長時間労働や現場での肉体労働など、改善すべき労働環境の問題も残っています。

これらの課題を克服し、より多くの女性デザイナーが活躍できる環境を整えることが、ディスプレイ業界の今後の発展に不可欠だと言えるでしょう。

次回は、ディスプレイ会社と業界就業者の現状について詳しく見ていきます。

ディスプレイ会社と業界就業者の現状

ディスプレイ業界の企業構造と就業者の現状について、詳しく見ていきましょう。

  1. 企業規模の分布:
    ディスプレイ業界は、大手企業から中小企業、個人事業主まで幅広い規模の企業で構成されています。経済産業省の調査によると:
  • 1〜4人の小規模事業所が全体の31%
  • 5〜9人の事業所が28%
  • 10〜19人の事業所が21%
  • 20人以上の事業所が残りの20%を占めています
  1. 就業者の特徴:
  • 総就業者数:約7万3千人(2023年時点の推計)
  • 年齢構成:若手からベテランまで幅広い年齢層が活躍していますが、近年は若手の採用に力を入れている企業が増加しています。
  • 職種別構成:デザイナー、営業、施工管理、企画、エンジニアなど、多岐にわたる職種があります。
  1. 雇用形態:
  • 正社員だけでなく、契約社員やフリーランス、派遣社員など多様な雇用形態があります。
  • 特に、デザイナーや施工技術者にはフリーランスが多く、プロジェクトごとに異なるチームを組むことも珍しくありません。
  1. 労働環境の特徴:
  • プロジェクト単位の仕事が多いため、繁忙期と閑散期の差が大きい傾向があります。
  • 展示会やイベントなどでは、短期間で集中的に作業を行うことも多く、時期によっては長時間労働になることがあります。
  • 一方で、近年は働き方改革の一環として、労働時間の管理や有給休暇の取得促進などの取り組みが進んでいます。
  1. 人材育成:
  • オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)が中心ですが、大手企業を中心に体系的な研修プログラムを導入する動きも見られます。
  • デジタル技術の進展に伴い、3DCGやVR/ARなどの新技術に関する研修も増えています。
  1. 課題:
  • 人材の確保と育成:特に技術者やデザイナーの確保が課題となっています。
  • 技術の継承:ベテラン技術者の持つノウハウを若手に継承していくことが重要です。
  • 働き方改革:長時間労働の是正や有給休暇の取得促進など、さらなる改善が求められています。

ディスプレイ業界は、創造性と技術力が求められる独特の業界です。多様な人材が活躍できる場であると同時に、常に新しい挑戦が求められる業界でもあります。今後は、デジタル技術の活用やサステナビリティへの対応など、新たな課題にも取り組んでいく必要があるでしょう。

次回は、ディスプレイ業界が日本の商業・文化にどのような影響を与えているかについて見ていきます。

ディスプレイ業界は日本の商業・文化の縮図

ディスプレイ業界は、日本の商業と文化の発展に深く関わり、その縮図とも言える存在です。この業界がどのように日本の商業・文化に影響を与え、反映しているかを見ていきましょう。

  1. 商業施設の進化:
  • 百貨店からショッピングモール、専門店まで、日本の商業施設の発展とともにディスプレイ業界も成長してきました。
  • 消費者の購買行動の変化に合わせて、体験型店舗やポップアップストアなど、新しい形態の商業空間を創出しています。
  1. 文化施設の充実:
  • 博物館や美術館、科学館などの文化施設の展示デザインを手がけ、日本の文化や科学の普及に貢献しています。
  • 最新のテクノロジーを活用した展示手法により、来場者により深い学びと体験を提供しています。
  1. イベント・展示会の発展:
  • 東京モーターショーや各種見本市など、大規模イベントの会場設計や展示ブースの制作を通じて、日本の産業の魅力を国内外に発信しています。
  • 企業のブランディングや製品PRの場として、展示会やイベントの重要性が高まる中、その舞台づくりを担っています。
  1. 日本的な美意識の表現:
  • 和の要素を取り入れる事で海外から旅行者の目を強く引くことが出来ます。

Citations:
[1] https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3632
[2]https://lp.fk-networks.co.jp/fcr/202407_832403829/