屋外LEDビジョンは、企業や自治体が情報発信や広告効果を高めるための重要なツールです。しかし、設置には技術的な知識と現場での対応力が求められます。本記事では、業界関係者向けに屋外LEDビジョンの設置方法を詳しく解説します。
LEDビジョン設置の基本知識
設置環境の選定
屋外LEDビジョンを設置する際、最初に考慮すべきは環境条件です。風雨や温度変化にさらされる屋外では、素材や塗装の選定が重要となります。特に、塩害が懸念される地域では、SUS304やSUS316といった耐食性に優れたステンレス鋼材が推奨されます。また、塗装もウレタン樹脂やフッ素樹脂といった耐候性の高いものを選ぶことで、長期間の使用に耐えうる耐久性を確保できます。設置場所の気象条件を十分に調査し、それに適した設計を行うことが、トラブルを防ぐ第一歩です。
鋼材関係材質比較一覧
材質 | (板厚) | 比重 | (例)寸法(平板状態) | 重量(k) | 主な性質 | 使用実績例 | 加工難度 | 主な用途(価格等) | |||||||||||
クラスター | ユニット | 部材 | 屋外 | 塩害 | 軽量化 | 価格 | |||||||||||||
酸洗 | 1.6 | t | 7.85 | 2000×1000 | 25.12 | 一般的な鋼材 | 内部材等 | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | ||||||
ボンデ | 1.6 | t | 7.85 | 2000×1000 | 25.12 | 亜鉛を電気鍍金したもので酸洗材 よりも耐食性を向上させた物 | 標準仕様品 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ||||||
sus304 | 1.5 | t | 7.93 | 2000×1000 | 23.79 | 耐食・耐熱・加工・溶接性に優れ 最も使いやすい材料 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | × | |||||||
sus316 | 1.5 | t | 7.93 | 2000×1000 | 23.79 | 海水をはじめ各種媒質にsus304より 優れた耐食性を持った物 | △ | △ | ○ | ◎ | ◎ | × | |||||||
アルミ | 1.6 | t | 2.69 | 2000×1000 | 8.61 | 材料が、軽量であり、尚且つ、耐食性・ 強度・加工性に優れたもの | HIT・shop(扉・内部材) | × | × | △ | ○ | △ | ◎ | × | |||||
銅板 | 1.6 | t | 8.89 | 2000×1000 | 28.45 | 伝電導率に優れた鋼材(電機部品加工材) | 使用実績無 | × | |||||||||||
チタン | 1.5 | t | 4.51 | 2000×1000 | 13.53 | 優れた耐食性・強度を持ち尚且つ、 軽量である | 使用実績無 | ◎ | ◎ | ◎ | × |
筐体塗料/処理関係
種類 | 仕上げ | ※(メラミン基準) | 主な性質 | 主な用途例 | 使用実績 | 使用に関しての問題点等 | ||
耐年数 | 塩害 | 膜厚比較 | ||||||
メラミン | 焼付 | 1年 | × | 100μ | 光沢保持性・耐薬品性に 優れている | 家庭用機器等 | 屋外には適さない。 安価・作業性が良 | |
アクリル | 焼付 | 3年 | × | 70μ | 耐候性・耐水性に優れている | 各種プラント | 屋外標準 | 屋外での標準的な環境に対応 (塩害除く)作業性が良い |
主に屋外 | ||||||||
ウレタン樹脂 | 焼付 | 7年 | ◎ | 45μ | 耐候性・耐水性・耐薬品性に 優れている | 橋・煙突 | 屋外・塩害に対し適した塗料・高値・常温乾燥型が、 主の為作業性が悪い、艶指定には不向き | |
自然乾燥 | 7年 | ◎ | 45μ | 車両等 | ||||
フッ素樹脂 | 焼付 | 10年超 | ☆ | 30μ | 超耐候性・超薬品性塗料 | 車両・船舶 | 沖縄鋳鉄 | 屋外・塩害その他あらゆる環境に対し適応する 塗料超高値・高温焼付の為鋼材に支障をきたしやすい |
自然乾燥 | 10年超 | ☆ | 30μ | 建材等 | 建省他 | |||
亜鉛溶射 | 10年超 | ☆ | 45μ | 鉄の表面にコーティングする事により電気化学的に防食します。鉄部が侵されても錆は進行しない | 道路用掲示板・配電盤・橋・建造物 | 積水樹脂向 | 板厚2.3t以上・処理工程上、精度を要する商品には不可 |
筐体仕様比較
鋼材 | 塗装/処理 | 外形寸法(例) | 板厚 | ㎡ | 参考物件名 | 加工適性 | 製品加工時の問題点 |
ボンデ鋼板 | アクリル焼付 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 特に問題無し |
ボンデ鋼板 | アクリル焼付 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | ○ | 特に問題無し |
ボンデ鋼板 | ウレタン塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 常温乾燥が主の為、日数要 |
ボンデ鋼板 | ウレタン塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | ○ | 常温乾燥が主の為、日数要 |
ボンデ鋼板 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 高温焼付の為、歪等の問題有り |
ボンデ鋼板 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | △ | 高温焼付の為、歪等の問題有り |
ボンデ鋼板 | 亜鉛溶射 | w2000×h1500×d350 | 2.3t | 8.45 | 標準タイプ | △ | 重量が増す(2.3t)・歪大 |
ボンデ鋼板 | 亜鉛溶射 | w2000×h1500×d350 | 2.3t | 8.45 | ブロックタイプ | × | 処理工程上、精度を要する商品には不可 |
SUS304 | アクリル焼付 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 特に問題無し |
SUS304 | アクリル焼付 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | ○ | 特に問題無し |
SUS304 | ウレタン塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 常温乾燥が主の為、日数要 |
SUS304 | ウレタン塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | ○ | 常温乾燥が主の為、日数要 |
SUS304 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 高温焼付の為、歪等の問題有り |
SUS304 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | △ | 高温焼付の為、歪等の問題有り |
SUS304 | HL・CL塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | △ | 塗装処理時と全く異なる板金加工となる |
SUS304 | HL・CL塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | × | |
SUS316 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | 標準タイプ | ○ | 高温焼付の為、歪等の問題有り |
SUS316 | フッ素塗装 | w2000×h1500×d350 | 1.6t | 8.45 | ブロックタイプ | △ | 鋼材が硬い・高温焼付の為、歪等の問題有り |
適切なメンテナンス方式の選択
設置後のメンテナンス性も、設置環境と同様に重要です。LEDビジョンのメンテナンス方式には、フロントメンテナンスとリアメンテナンスの2種類があります。フロントメンテナンスは、表示装置の正面から作業を行うため、スペースが限られている場所でも対応可能です。ただし、高所作業車が必要になるため、作業コストが増加する場合があります。一方、リアメンテナンスは、装置背面のスペースを確保することで効率的なメンテナンスが可能です。設置場所のスペース条件と運用コストを考慮し、最適な方式を選択することが求められます。
設置手順
基礎架台の設計と施工
LEDビジョンを安全に設置するためには、まず基礎架台の設計が必要です。この架台は、設置場所の地盤や風圧条件に応じて設計され、LEDビジョンの安全性を確保する重要な役割を果たします。設計段階では、A工事の鉄骨に対してアングルや接続ブラケットを使い、しっかりと固定することが基本です。また、施工時には水平や垂直のズレを防ぐため、精密な計測と調整が求められます。これにより、ビジョンの倒壊リスクを防ぎ、長期間にわたる安定した運用が可能となります。
表示装置の取り付け
基礎架台が完成した後は、LED表示装置本体を取り付けます。この工程では、接続ブラケットやボルトを使用し、ビジョンを確実に固定します。取り付け時には、風圧や振動に耐えられるかを確認しながら作業を進めます。また、取り付け後は、表示装置の水平や垂直を再度確認し、映像が正常に表示されるように調整します。適切な手順と高精度の取り付けにより、視認性が高く、耐久性に優れた設置が実現します。
設置後の保守・点検
定期点検の重要性
LEDビジョンは、長期間にわたって情報を表示するため、定期的な点検が欠かせません。点検では、電気系統や表示モジュールの動作確認、接続部の緩みや劣化の有無を確認します。特に、屋外設置では過酷な環境下での使用が想定されるため、早期に問題を発見し、適切な対応を行うことが重要です。また、定期点検を怠ると、故障による映像の乱れや停止が発生し、広告効果やブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。点検を計画的に実施し、安定した運用を目指しましょう。
トラブルシューティング
万が一、LEDビジョンに不具合が発生した場合は、迅速なトラブルシューティングが求められます。フロントメンテナンスでは高所作業車を使いながら作業を行うため、作業効率が低下する可能性があります。一方、リアメンテナンスでは、バックヤードから作業を行えるため、迅速な修理が可能です。不具合の内容によっては、部品交換やソフトウェアの再調整が必要になる場合もあります。迅速かつ的確な対応を心がけ、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが重要です。
まとめ
屋外LEDビジョンの設置には、環境条件、設置手順、メンテナンス体制を総合的に考慮する必要があります。
本記事の内容を参考に、効率的で安全な設置を実現してください。