業界の全体像:マクロトレンドと需要構造
日本の照明・電気設備市場は、LEDシフト、スマート化(無線制御)、サステナビリティ、顧客中心ソリューション、そしてDXの5本柱で再編が進みます。とりわけ 詳細ブリーフィングドキュメント:日本の照明・電気設備業界における主要テーマと企業戦略 が示す通り、蛍光灯・水銀ランプの終息を背景に、更新需要は2025~2028年にかけてピーク化。器具一体型LEDやモジュール交換型の選定、制御規格(DALI、Bluetooth、独自無線)の比較検討が、設計段階の最重要ポイントになっています。
LEDシフトの加速
- 規制・製造終息:水銀ランプは実質姿を消し、蛍光ランプも終息。更新では「光束維持」「ちらつき対策」「グレア抑制」「非常用との整合」まで見ます。
- 投資回収(ROI):電力単価の上昇で省エネ効果が効きやすく、さらに保守コスト(ランプ交換・脚立作業・点検回数)が大幅縮減。
- ケース:スタジアム、ダム、道路、公共施設、倉庫などの大規模LED化は、見た目や安全性の改善も同時達成。
「光」の価値創造
- 健康・快適:昼夜リズムを考慮した調光調色や、眩しさの管理、演色性の向上。
- 演出・ブランディング:季節や時間で色味を切り替えるライトアップ、売場の色演出、ホテルの体験価値向上。
- 人に寄り添う光:教育・医療・福祉では、視作業性と心理的安心がKPI。
スマート化・無線制御
- 無線プロトコル:DALI、Bluetooth、独自メッシュ。既設配線を活かしながら、群管理・シーン制御・日射/在室連動を実装できます。
- スケーラビリティ:小規模から大規模まで段階導入が可能。BMS連携で運用データが経営資源に。
サステナビリティ
- Scope 2削減:高効率器具+制御で消費電力を可視化・最適化。
- 循環配慮:再生材活用、回収・リサイクル、長寿命化で全体環境負荷を低減。
顧客中心ソリューション
- 設計支援、シミュレーション、施工、保守、運用改善まで一気通貫。
- 「製品を売る」から「成果を提供」へ(快適性、作業性、売上寄与、事故低減など)。
DXの加速
- AR/VRで完成イメージの事前合意を素早く形成。
- 設計クラウド、照度自動計算、運用データ解析が標準化。
主要企業マップと競争軸
ここでは、各社の専門性・差別化ポイント・導入での使い分けを実務視点で整理します。
IRISO(自動車向けコネクタ)
- 強み:車載高速伝送、防水・耐振、FPC/FFCなど過酷環境に適合。
- 示唆:照明の組込コネクタ信頼性や、移動体機器での電装接続に知見を活かせます。
ELPA(生活者起点の電材)
- 強み:在宅・リモートワークの利便を高める周辺機器、展示会を活用した新規獲得。
- 示唆:小売・リフォーム領域での周辺アクセサリ展開に相性◎。
GENTOS(LEDライト専業)
- 強み:ライト用途の幅広さ(フラッシュ・ヘッド・ワーク・ランタン)。
- 示唆:施設点検・夜間作業・BCP備蓄で現場の即効性を提供。
岩崎電気(大規模施設の更新牽引)
- 強み:スタジアム、ダム、道路など屋外・大規模の実績。腐食診断など保全技術も。
- 示唆:老朽化インフラのLED化+安全管理をワンパッケージで推進。
山善(総合×現場起点)
- 強み:暑熱・省エネ・現場改善の横断ソリューション。
- 示唆:製造・物流の作業安全×省エネの同時達成に寄与。
YAZAWA(コスト×安全)
- 強み:自主回収情報など安全対応を明示。
- 示唆:大量導入時の品質リスク管理の相性が良い。
オーデリック(器具専業×接続)
- 強み:コネクテッド照明、豊富な施工事例と注意喚起で安全運用を支援。
- 示唆:設計~施工~運用のエビデンスを揃えたい案件に有効。
コイズミ照明(設計支援の厚み)
- 強み:LUX assist、クラウド設計ツール、DALI、配光の美しさ。
- 示唆:化粧室・売場・外構など意匠重視ゾーンに。
遠藤照明(人×光)
- 強み:Tunable/Synca、施設ごとの最適解とツール群。
- 示唆:医療・教育・福祉・ホスピタリティの価値向上に直結。
ホタルクス(住宅&施設)
- 強み:ホタルック、読みやすい光、農業用途の応用展開。
- 示唆:住宅~小規模施設の快適機能+特殊用途に。
パナソニック(総合プラットフォーム)
- 強み:LiBecoM、WiLIA、PiPitなど無線制御と設計DX。
- 示唆:大規模分散拠点の統合管理に強い。
大光電機(意匠×検証環境)
- 強み:ショールーム/シミュレーションの体験設計。
- 示唆:ホテル・商業施設の世界観づくりに最適。
Confianza(施工・基地局)
- 強み:高所・屋外のロープアクセス含む施工機能。
- 示唆:基地局・屋上設備と同時改修の一括発注に。
オーム電機(産業小売×保証運用)
- 強み:保証・ユーザーサポートの分厚さ。
- 示唆:大量導入後の運用安定を重視する案件で有利。
デンコー(演出・エンタメ)
- 強み:ステージ・展示の演出電飾プロ。
- 示唆:実験的演出や巡回イベントに強い伴走力。
ニチハ(外装DX×サステナ)
- 強み:外装材の圧倒的ポートフォリオ、CO2固定・リサイクル。
- 示唆:外構照明×外装の統合デザインで街並み価値向上。
ソリューション別の勝ち筋(ユースケース×KPI)
既存施設のLED更新
- KPI:電力量△、照度安定、保守回数△、事故・クレーム率△。
- 設計の勘所:既設器具の形状・高さ・配線、非常用・避難誘導の整合、作業時間帯の確保。
- 実務Tip:高所は点検困難。長寿命×高信頼+腐食診断で保全計画を平準化。
スマートビル照明
- KPI:在室連動、日射連動、省エネ率、空間快適度、工数削減。
- 設計の勘所:DALI vs Bluetooth vs 独自。スモールスタート→面展開が成功パターン。
- 実務Tip:BMS/EMSとAPI連携で可視化・最適化を習慣化。
医療・教育・福祉
- KPI:視認性(UGR、均斉度)、覚醒/睡眠リズム、心理的負担、事故率。
- 設計の勘所:演色性(Ra、R9)とちらつき抑制、タスク/アンビエントのバランス。
- 実務Tip:シーンプリセット(診療、休息、清掃)で運用を簡略。
小売・ホスピタリティ
- KPI:回遊率、滞在時間、購買率、SNS露出。
- 設計の勘所:色温度のゾーニング、演色性の高い商品面、グレア制御。
- 実務Tip:季節・時間で演出を変える「番手管理」で飽きさせない。
物流・製造
- KPI:事故減、ピッキング精度、作業効率、電力原単位。
- 設計の勘所:高天井用配光、耐環境(粉塵・油ミスト・温度)、メンテ性。
- 実務Tip:ゾーン別在室制御+昼光センサで省エネを底上げ。
導入ロードマップ(調査→設計→調達→施工→運用)
エネルギー監査(現状把握)
- 既設台帳:器具型式、設置年、回路、点灯時間、保守履歴。
- 使用実態:ピーク・平均、在室、昼光。
- 料金分析:契約形態、再エネ賦課金、デマンド。
設計とシミュレーション
- 照度・配光:基準適合(作業別)とグレア抑制の両立。
- シーン:時間帯・用途で調光調色。
- 冗長性:非常用、避難ルート、BCP整合。
調達・ベンダー選定
- 全寿命コスト(TCO):本体+工事+電力+保守+停止損失。
- 保証・保守:年数、条件、交換体制。
- 相見積:仕様の粒度を合わせて定量比較。
施工・試運転
- 無線設定:アドレス、群、シーン、ログ取得。
- 検収:照度、均斉度、点滅・ちらつき、無線到達、非常時動作。
運用・メンテ
- データ駆動:稼働ログから最適スケジュールへ。
- 予防保全:稼働時間・温度で交換時期を予測。
- 継続教育:現場操作教育、手順書、緊急連絡網。
実務に効く比較早見表
テーマ | 代表企業/技術 | 使いどころ | 注目KPI |
---|---|---|---|
大規模屋外LED | 岩崎電気 | スタジアム・道路・ダム | 消費電力、照度、グレア |
無線制御 | パナソニック、遠藤照明、コイズミ | 既設活用の段階導入 | 省エネ率、操作性 |
意匠×配光 | オーデリック、コイズミ、大光電機 | 商業・ホテル | 演出、均斉度 |
点検・保全 | 岩崎電気(腐食診断) | 高所・屋外インフラ | 点検工数、事故率 |
住宅&小規模 | ホタルクス、オーム電機 | 住宅・小規模施設 | 快適機能、保証 |
周辺アクセ | ELPA、GENTOS | 在宅・保守・BCP | 作業効率、安全性 |
外部リソース
- 経済産業省:省エネルギー政策・事例集(最新の省エネ基準や補助制度の確認に有用)
https://www.meti.go.jp/
FAQ(よくある質問)
Q1. LED化の最初の一歩は?
A. 既設台帳化とエネルギー監査です。点灯時間・用途・基準を明確化し、優先度の高いゾーンから段階導入を。
Q2. 無線制御は信頼できる?
A. 適切な電波設計と群分け、干渉対策、フェイルセーフ設計で高信頼運用が可能。まずは限定フロアでPoCを。
Q3. 調光調色は本当に必要?
A. 医療・教育・オフィス・ホテルでは作業性と満足度が向上。単純な昼夜切替でも効果があります。
Q4. TCOで見積比較するコツは?
A. 機器+工事+電力+保守+停止損失を同一条件で積算。保証と交換体制まで定量化しましょう。
Q5. 補助金・制度のチェックは?
A. 国・自治体の省エネ補助を確認。要件に制御が含まれるケースも増えています(要件の事前精査が鍵)。
Q6. BCP観点のポイントは?
A. 非常用照明の適合、避難経路の明瞭化、非常時のデフォルト点灯ロジック、現場教育をセットで。
Q7. どの企業に相談すべき?
A. 大規模屋外は岩崎電気、スマート制御はパナソニック/遠藤照明、意匠はオーデリック/コイズミ/大光、住宅・小規模はホタルクス/オーム、施工力はConfianza など、案件特性に合わせた分担が効率的。
Q8. 更新時のリスクは?
A. 既設配線の老朽化、器具重量・熱設計、非常用回路の整合、電波干渉。事前調査が最大のリスク低減策です。
まとめ:次アクション
- 短期(0~3か月):台帳・監査、優先度マップ、PoC設計。
- 中期(3~12か月):スモールスタート→無線制御拡張、意匠ゾーン最適化。
- 長期(1年~):データ駆動運用、BCP強化、循環型保全スキーム。
上記ブリーフィング資料はこちら
比較や調査はこちら。(※登録が必要です。問い合わせでメールを下さい)